M&AM&Aの種類

■概要
株式譲渡とは、会社の株式を売買して所有者を変更し、経営権(支配権)を移転する方法です。
株式の過半数(51%以上)を取得すれば、議決権を持って会社の意思決定をコントロールできます。
売買するのは株式そのものであり、会社そのものが解散・再設立されるわけではありません。
■特徴
会社の契約・従業員・資産・負債などの権利義務はそのまま維持される
会社の「所有者」だけが変わる
■売り手側のメリット・デメリット
| メリット | デメリット |
| 事業・雇用をそのまま維持できる:株式を譲るだけなので、従業員や顧客との契約は継続。 手続きが比較的シンプル:事業譲渡と違い、個別契約や許認可移転が原則不要。 売却益を得られる:株式の売却代金がそのまま株主(経営者など)の手元に残る。 | 簿外債務が後から発覚するとトラブルに:表明保証違反として損害賠償請求される可能性あり。 個人保証・担保の解除が必要な場合がある:借入金の連帯保証を外す手続きが必要になる。 |
■買い手側のメリット・デメリット
| メリット | デメリット |
| 既存の契約・取引先を維持できる:ビジネスの継続性が高く、事業をすぐに運営可能。 会社全体を一括取得できる:株式の取得で資産・ノウハウ・人材もまとめて手に入る。 | 簿外債務や訴訟リスクを引き継ぐ可能性:しっかりしたデューデリジェンスが不可欠。 経営文化の違いによる摩擦:既存経営陣・従業員の反発リスク。 |


■概要
事業譲渡とは、会社全体ではなく特定の事業や資産を売却し、その経営権を移す方法です。譲渡する事業の範囲を自由に設定できるため、売り手は残したい事業を残し、買い手は必要な部分だけ取得できます。売買の対象はあくまで「事業や資産」であり、会社の法人格自体は移転しません。
■特徴
譲渡対象(事業・資産・顧客契約・従業員など)を明確に切り分ける
法人格は売り手企業のまま残る
許認可や契約の移転、従業員の再雇用契約など個別手続きが必要
■売り手側のメリット・デメリット
| メリット | デメリット |
| 不要な事業・不採算部門だけを切り離せる:経営効率を高められる 核となる事業や法人格を残せる:会社自体は存続可能 | 許認可や契約を移し替える必要がある:手続きが複雑 従業員の移籍手続きが必要:同意や再契約が必要になる |
■買い手側のメリット・デメリット
| メリット | デメリット |
| 必要な事業だけ取得できる:不要な負債や資産を抱え込まない 既存事業とのシナジーを生みやすい:ターゲットを絞った買収が可能 許認可やブランドをそのまま利用できる場合がある | 契約や許認可の移転手続きが必要:時間とコストがかかる 顧客・従業員が離れるリスク:引き継ぎの工夫が必要 売り手との分離作業で事業運営が一時的に不安定になる可能性 |


■概要
合併とは、2つ以上の会社が法的に1つの会社になる方法です。
合併には、以下の2種類があります。
吸収合併:一方の会社が存続し、他方の会社を吸収する
新設合併:両方の会社を解散し、新しい会社を設立する
合併後は、存続会社または新設会社が資産・負債・契約・従業員など全ての権利義務を承継します。
■特徴
会社そのものが統合され、完全に一体化する
契約や従業員関係は原則そのまま引き継がれる
組織文化や経営方針も一本化が必要
■売り手側のメリット・デメリット
| メリット | デメリット |
| 事業・雇用を丸ごと引き継いでもらえる:事業承継に適している 経営資源の統合により事業継続性が高まる | 会社が消滅する(新設合併の場合は両社とも) 合併比率の設定によっては株主の持分が減る |
■買い手側のメリット・デメリット
| メリット | デメリット |
| 市場シェアの大幅拡大が可能 経営資源(人材・技術・ブランド)の一括取得 | 組織文化や業務プロセスの統合コストが大きい 統合失敗による企業価値低下リスク |


■概要
会社分割とは、会社の一部の事業や資産・負債を切り離し、新会社に承継させる、または他社に移す方法です。組織再編や不採算事業の切り離し、成長事業の独立展開などを目的として行われます。
会社分割には大きく分けて以下の2種類があります。
吸収分割:既存の他社に事業を移す
新設分割:新会社を設立して事業を移す
■特徴
法人格を新設または既存会社に移す形で事業を切り分ける
分割対象の資産・負債・従業員・契約などを包括的に承継できる
株主総会の特別決議や登記手続きが必要になる場合が多い
■売り手側のメリット・デメリット
| メリット | デメリット |
| 不採算部門・ノンコア事業を整理できる:事業再構築や選択と集中が可能 法人格を残したまま事業だけを移せる:コントロールを保ちやすい 移転手続きが比較的スムーズ(包括承継) | 社内の組織再編・人員調整が必要になる 社内外の調整・説明コストが発生する 会計・税務処理が煩雑な場合もある |
■買い手側のメリット・デメリット
| メリット | デメリット |
| 必要な部門・人材・資産を一括して取得可能 新会社であれば、自社仕様に設計された組織を構築できる 法律上の包括承継で、契約や従業員のスムーズな引き継ぎができる | 元会社との組織的・文化的な摩擦が起こることがある 分割した事業の独立採算性が低い場合は経営が困難になる 分割による企業評価やイメージへの影響 |

Sell売りたい方へ
M&Aにおいて、売却条件を有利にし、交渉を円滑に進めるためには、事前の準備が極めて重要です。
準備不足のまま交渉を開始すると、企業価値が低く評価されたり、条件面で不利になる可能性があります。
Buy買いたい方へ
M&Aにおいて買い手企業は、単に企業を取得するだけではなく、その後の成長やシナジー創出を見据えて戦略的に準備を進める必要があります。
準備不足のまま交渉に臨むと、買収条件の不利化、統合後の混乱、さらには投資回収の失敗につながる恐れがあります。
FlowM&Aの流れ
M&Aは企業の成長や事業承継の手段として広く活用されています。取引は複数の段階を経て進められ、それぞれの段階に応じた準備と判断が求められます。
以下は、一般的なM&Aの進行プロセスです。
まずはM&Aを行う目的を明確化し、必要な準備を整えます。
条件に合う相手先を見つけることがM&A成功の第一歩です。
候補が決まったら、価格やスケジュールなど基本的な条件を調整します。
買い手が対象企業の価値やリスクを把握するため、財務・法務・税務・労務などを調査します。
詳細調査を踏まえ、売買契約書を締結します。
契約内容に基づき、株式や資産の移転と資金の決済を行います。
M&A成立後は、組織・業務・文化の統合を行い、取引の効果を最大化します。
まずはM&Aを行う目的を明確化し、必要な準備を整えます。
売り手は売却理由や条件を整理し、買い手は買収目的や資金計画を固めます。
- 売却理由・買収目的の整理
- 希望条件や譲渡範囲の設定
- 財務・法務資料の確認と整備
- 関係者間での意思統一
条件に合う相手先を見つけることがM&A成功の第一歩です。
公開情報や専門ネットワークを活用し、候補企業を抽出します。
- 探索条件の明確化(業種、地域、規模など)
- 候補企業のリストアップ
- 情報開示の管理(秘密保持契約の活用)
候補が決まったら、価格やスケジュールなど基本的な条件を調整します。
その内容を文書化し、基本合意書として取り交わします。
- 価格・条件の調整
- 守秘義務や専属交渉権の設定
- 基本合意書(LOI・MOU)の作成
買い手が対象企業の価値やリスクを把握するため、財務・法務・税務・労務などを調査します。
売り手は必要資料を整え、調査を円滑に進めます。
- 財務・法務・税務・労務の調査
- 必要資料の収集と提供
- 調査結果に基づく条件見直し
詳細調査を踏まえ、売買契約書を締結します。
契約には価格、支払条件、保証条項、契約解除条件などが盛り込まれます。
- 売買契約書(SPA)の作成
- 表明保証・違約条項の設定
- 契約条件の最終確認
契約内容に基づき、株式や資産の移転と資金の決済を行います。
必要な登記や名義変更もここで行います。
- 資金決済の実施
- 株式・資産の譲渡手続き
- 登記や契約の名義変更
M&A成立後は、組織・業務・文化の統合を行い、取引の効果を最大化します。
- 組織・人事制度の統合
- 業務・システムの統合
- ブランドや文化の共有
M&Aの成功には「企業価値の把握」が不可欠
M&Aの各段階で重要になるのが「企業価値の正確な把握」です。
価値を知らずに交渉を始めると、不利な条件で取引が進む可能性があります。
そのため、取引開始前に自社の企業価値を客観的に診断することが推奨されます。
